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星に願う


緊急事態宣言が解除されて、徐々に日常に戻ってきた今日この頃。

今までの生活とは全く違う、新たな日々が始まっている。

こころはざわざわとしたままで、なんとか前へ進もうともがいています。

きっとたくさんの人がそんな葛藤を抱えたまま日々へ戻ろうとしているのだろう。

私は、自粛中、新しいテキスタイルのデザインを顔彩で描いて、生地にして、洋服を作るという試みをしていました。今までも洋服を作ったことはありましたが、自分自身で染めて、縫うということを一人でしてきて、今回は、顔彩で描いた絵を、プリントして、縫製職人さんに依頼して、いくつかのブラウスと、シャツと、染めのワンピースを制作しました。

職人さんとやりとりを重ねて、何度もメールで話し合い、イメージを伝えて人とともに作ることを味わいました。今まで一人でやってきたsome:tecoの活動でしたが、違う形を模索したいとの思いあって挑戦したことでした。

私は、なぜ絵を描いて、布を作って、服を作っているのだろう?

先日、取材を受けることがあって、振り返ったり考えることも多く、自粛期間で、人と会うことか遮断されて、このところたくさん一人で考えていました。

先生の仕事のこと、創作のこと、これからのこと・・・。

私は作ることをやめることはできない。

ただ、作りたいからつくる。

人との関わりが苦手な私にとって、絵を描くとき、ものづくりしている時が、本当の自分で居られる居場所でした。大人になった今も。

色を紙にのせている瞬間、自由になれる。

そんなテーマで展覧会をしたこともあったけれど、絵を描くこと、色を染めることが生きているという充実感で満たされる時間なのです。

だから、自分自身の活動は一人で守りたい、特別な自分の時間や空想、イメージの世界を守るためのもので、誰にも踏み込んでもらいたくなかったのかもしれません。

仕事は、人と共にするもの、そして社会に返すべきもの。

対価としてお金をもらうもの。

そう考えると自分の制作活動はそういったものとは別の世界にあるもの。

自分という魂、精神を、保つための、安らげる部屋という感じなのかもしれません。

だから制作が仕事になるということは違うのかなと感じることもあります。

でも、ただ、自分の自己満足のためにやっているだけで良いのか、人との関係性は?という気持ちもあるのです。私は「矛盾」でできている。

人との繋がりのために、人に使ってもらうためのものづくり、ワークショップをしてきました。そして、たくさんの人が染めることが楽しいといって感謝してくれました。

それがとても嬉しかった。

自分を守るための世界が、誰かの役に立つということが、たまらなく嬉しかったのです。

今回、服作りをして、職人さんにsome:tecoの世界観を伝え、一緒に作り上げてくれる人を探したいと伝えると、多くの職人さんが手をあげてくださいました。

そして、依頼した職人さんは染めや顔彩のテキスタイルをとても気に入ってくださいました。

私は、縫製の専門的な技能はないので、イメージを伝えて、希望を伝えていくとその思いを汲み取って、素敵なブラウスやシャツやワンピースを仕立ててくれたことが、とても幸せな体験でした。

ノースリーブのブラウスは顔彩で描いた色彩をパターンにし、薄いコットンの生地にプリントし、シェルのボタンを留める柔らかいふんわりとしたブラウスになり、

森のようちえんの子どもたちの観察から生まれた、「雨の日の子ども」のデザインはコットンリネン

のシャツになりました。数年前、染めた海のような青いテキスタイルは、時間をへて、ゆったりとしたワンピースに生まれ変わりました。どれも、私にとっては特別な一枚なのです。

そして、とても満足いくものとなりました。

洋服は女性にとって、気持ちを明るく前向きにしてくれる魔法のようなもの。

そして、色彩にも心に訴える力を持っています。

そして、自分らしく輝くこと、自由になれること力を与えてくれる。

私も、昔から洋服やおしゃれというものに救われてきました。

きっと世の多くの女性たちにとっても同じなのかなと思います。

自分を守ってきた創作が、人を輝かせるためのものになってほしい。

そのために、自分の殻を脱いで、人との関わりの中から、もっと価値あるものを作りたいと思ったのです。

大人になった今でも、すぐに泣いて、落ち込んで苦しんでしまう癖のある私ですが、その度に、乗り越えて前へ進めたのは、絵を描くことやものづくりという、自分の軸を支えてくれるものがあったからだと思います。自信を持つことができる、そういう部分があったから、どんなに傷つくことがあっても、立ち直れないようなことや想いに打ちひしがれることがあっても、前へもう一度進むことができたのです。そして、そんな時、洋服もその力を与えてくれる一つでした。

今、テキスタイルを作っている意味、理由は、偶然かもしれないですが、私の根本にあるものなのかもしれません。

すっかり、長くなってしまいました。

最後まで読んでくれてありがとうございます。

これからやりたいことはたくさんあります。

洋服の世界観を伝えるために、もっと感性を磨きたい。

新しいテキスタイルを作りたい。染めやプリントだけでなく、織りや刺繍の生地を作ってみたい。

モデルさんを見つけて、写真や、動画を美しく撮れるようになりたい。

詩を書いて、テキスタイルや洋服と共に伝えたい。

子どもたちや親子のためのワークショップをもっと色々形にしたい。

新しいワークショップを考えたい。

他の作家さんとともにコラボして新しいものづくりやワークショップを生み出したい。

地方の産地やものづくりを知って、繋がってみたい。

人との繋がりによって、違う世界や景色を見てみたい。

欲張りな私にはたくさんのやりたいことがあります。

そして、そんなきらきらとした空想や妄想を、自分の心の壁を破いて、そのまま、ありのままの自分で表現していきたい。そして、誰かを幸せにすることができたらと願っています。

今日は七夕。7月7日。

そんな思いを星に願っています。

some:teco

池田圭


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